2017年9月27日からスタートした「安藤忠雄展-挑戦-」を国立新美術館で観てきましたよ。
いつもなら会期後半の大混雑時期に重い腰を上げて観に行く事の多い展示会ですが、安藤忠雄ファンの奥様の希望もあり開始数日後という個人的には異例のタイミングで訪問した次第です。
建築をテーマとした展示会を観に行くのは初めてだったのですが、結果として非常に満足度の高い展示会となりました。
今回は「安藤忠雄展-挑戦-」の模様をご紹介しようと思います。
目次
「安藤忠雄展―挑戦―」の構成
安藤忠雄展は、ボクサーから独学で学び世界的な建築家となった安藤忠雄氏のルーツから、何を作ってきたのか、そして今(今後)何を作ろうとしているのかを、6つのセクションに分かれて紹介されています。
- プロローグ
- セクション1:原点/住まい
- セクション2:光
- セクション3:余白の空間
- セクション4:場所を読む
- セクション5:あるものを生かしてないものをつくる
- セクション6:育てる
訪問前の「建築の展示会は素人でも理解できるのか?」という心配は全く無用のものでした。
全ての展示が非常に丁寧に説明されているのに加え、やはり今回の目玉である「光の教会」の原寸展示があることで、ぐっと説得力が増し、安藤忠雄氏の「仕事」と「感性」そして、「思い」を理解する事ができたように感じます。
細かい説明は省略しますが、各セクションのみどころと感想をささっとご紹介しますね。
プロローグ とセクション1は混雑ぎみ 後回しでも良いかも
プロローグには安藤忠雄氏が独学時代に世界を旅した記録(スケッチや写真)、アトリエの模型などが展示されています。特に世界放浪の記録は、独学で建築を学んだ安藤忠雄氏のルーツを垣間見る事のできるセクションでした。独学とはいえ、写真もスケッチも上手いんですね(当たり前か)
続くセクション1では安藤忠雄氏が手がけた「住まい」に関する展示セクションです。初期の代表作である「住吉の長屋」をはじめ、計100作品近い住宅作品の写真や設計図、木模型などが展示されていました。
セクション1には非常に多くの展示が並んでいるのですが、序盤という事もあり、皆さんじっくり観て回る方が多く、全体的にはそんなに混雑していないにもかかわらず、セクション1はあまりじっくり観る事のできない状況でした。展示が一列に並んでおり、バラけにくいのも影響しているんだと思いますが、セクション1はそれなりに忍耐力を要します。
全体を見た後で考えてみると、セクション1の混雑次第ではセクション1は後回しにしていきなりセクション2で進んでも良いかもしれません。
セクション2以降にはその価値のある展示内容(ボリュームもかなりアリ)が続いており、セクション1で疲弊してしまうのはもったいないです。
セクション2:「光」は展示のハイライト!
何と言っても「光の教会」の原寸展示が素晴らしく、まさに「安藤忠雄展-挑戦-」一番のみどころと言えるセクションです。
「僕自身も含め」の話ですが、「光の教会」内は写真撮影をする方が多く、けして本物の教会の厳粛な雰囲気が完全に再現されている訳ではないのですが、それでも教会内に差し込む光と、コンクリートで表現された直線からくる凛とした空気は本物の雰囲気を感じ取る事ができ、いつか実際に「光の教会」を訪れてみたいと思わずにはいられない展示となっています。
ちなみに、「光の教会」を再現した費用は約7,000万円もしたとか。
本展示会だけのものとなるのか、はたまたこのまま常設展示となるのかは謎ですが、「国立新美術館開館10周年」を記念した展示会だけにめちゃくちゃ気合入ってますよね。
セクション3〜6も見どころ多し
「セクション3:余白の空間」では大阪「中之島プロジェクト」の計画案や模型など、「セクション4:場所を読む」では模型の後方に巨大スクリーンに映し出される「直島」プロジェクトの紹介などが続きます。
「セクション3」以降は比較的展示スペースがゆったりしている事もあり、セクション1ほどの混雑を実感する事はありませんでした。その為、各展示をじっくりと観る事が可能です。
後半の「セクション5:あるものを生かしてないものをつくる」では、「歴史的建造物の再生」をテーマとした取り組みが紹介されています。
僕自身はこの「セクション5:あるものを生かしてないものをつくる」が非常に興味深いものでした。
国内も「国際子ども図書館」や「大山崎山荘美術館」など、数例紹介されてはいるものの、セクション5で取り上げられている作品の多くは海外のもの(ロンドン、ヴェニス、パリなど)です。
残念ながら日本の建築物は歴史的価値があると言われながらも最終的に「取り壊し」となる事が多く、「歴史的建造物の再生」を試みる事は少ないように感じます。海外からも反対の声が多かった「ホテルオークラ」や、「大丸心斎橋店」、そしてオリンピックに向けて取り壊しが予定されている原宿駅など、今も昔も数多くの歴史的建造物が残念ながら「取り壊し」されてしまいましたよね。
耐震構造の問題や、費用の問題など、部外者には分からない多くの問題がありつつの判断だとは思うのですが、安藤忠雄氏の「あるものを生かしてないものをつくる」のような取り組みが国内でももっと広がって欲しいなぁと「セクション5」では感じたのでした。
最後の「セクション6:育てる」では、建築の枠を超えて「地域の街作りや社会貢献」に安藤忠雄氏がどのような思いをもって取り組んでいるかを紹介する映像が紹介されています。それなりに混んでいますが、5分程度と非常に短いコンテンツのため、入れ替わりも早く、疲れていても是非最後に観て頂きたいセクションでした。
音声ガイドはマスト!
安藤忠雄展の音声ガイドは安藤忠雄氏本人が解説しています。
この音声ガイドが素晴らしく、安藤忠雄展を一段と楽しむことが可能です。
僕は一度目の訪問で音声ガイドをスルーしてしまったことを後悔し、2度目の訪問で音声ガイドを利用しましたが、展示会の理解度が格段とアップしました。
安藤忠雄氏のこだわりやおちゃめな部分がぎっしり詰まった音声ガイド、必須ですよ。
都内の安藤忠雄作品をめぐるスタンプラリーも実施中
「安藤忠雄展-挑戦-」開催を記念して、開催期間中安藤忠雄建築スタンプラリーが実施されているようです。
スタンプラリーは「安藤忠雄展-挑戦-」の展示室内に加え、都内の安藤忠雄氏の建築物計8箇所で実施中。
- 国立国会図書館 国際子ども図書館
- 東京アートミュージアム
- 東急東横線 渋谷駅
- 21_21 DESIGN SIGHT
- 東京大学 情報学環・福武ホール
- 表参道ヒルズ
- 東急大井町線 上野毛駅
全てのスタンプを集めると抽選で20名にオリジナルグッズ5種類が当たります。
オリジナルグッズが欲しいかはさておき、まだ行った事のない作品もあったので近々訪問してみようかと思います。
「安藤忠雄展―挑戦―」の展示会図録は素晴らしい!オリジナルグッズは・・・
展示会会場のみで販売されている本展示会の図録は素晴らしいものでした。
展示内容に沿って、代表作を320ページにも渡ってカラーで紹介されており、1,980円という価格は破格と感じます。
しかも、本人直筆のイラストとサイン付き。
これは買わない訳にはいきませんよね。
逆にオリジナルグッズはファンならば・・・・、と言った感想です。
上記スタンプラリーのプレゼント商品(ユニクロとのコラボTシャツやトートバッグなど)が会場で売られているのですが、個人的にはあまり所有欲をそそられる物はありませんでした。
そんな訳で、今回購入したのは図録のみです。
「安藤忠雄展―挑戦―」会場の混雑具合
今回は展示会開始直後に訪問したこともあり、心配していたほどの混雑はありませんでした。
ただし、今後はマスコミで取り上げられる機会が次第に増えてくるはずで、どんどん混雑してくる事は間違い無さそうです。
実際、10月8日にはTBSで16時より「建築家安藤忠雄の挑戦〜のるかそるか」という番組を放送予定です。
混雑を避けたいならばなるべく早く訪問した方が良さそうですよね。
また、チケットの事前購入も忘れずにしておいた方が無難でしょう。
混雑次第では無駄に現地で行列に巻き込まれる事になると思います。
まとめ
以上、かなりざっくりとしてますが「安藤忠雄展-挑戦-」のご紹介でした。
最後に会場で感じた事をひとつ。
「安藤忠雄展-挑戦-」の会場では意外なほど外国の方が目につきました。確かに、近年のプロジェクトは海外が非常に多く、安藤忠雄作品を世界で目にする事が増えている事が大きな要因だと思いますがちょっとビックリでした。
特に、大きなプロジェクトは近年中国関連が目立ちます。国の勢いがそのまま建築物にも反映されているのでしょうが、日本人としてはちょっと複雑な心境です。(中国に建てないで!という訳では無いですよ。)
残念ながら頓挫してしまったザハ・ハディッド案の国立競技場問題のように、近年日本はあまりにもコストが優先される事が多く、仕方ないとは分かっていながらもありきたりな建物ばかり建ってしまう事が残念でならないのです。
ちょっと大げさかもしれませんが、今の日本に何十年後、もしかしたら何百年後まで訪れる人を感動させる建築物ってどのくらい建とうとしているのでしょう?なんて考えてしまったのでした。
と、最後に湿っぽい話となってしまいましたが、「安藤忠雄展-挑戦-」さすがに「国立新美術館開館10周年記念」とうたうだけの事はある、見どころの多い展示会でしたので是非訪れてみて下さい。
会期は12月18日(月)まで。
まだたっぷりと時間はありますが、混雑を避けたいならば早めの訪問がおすすめですよ!
「安藤忠雄展-挑戦-」
会 期 2017年9月27日(水)〜 12月18日(月)
休館日 毎週火曜日 開館時間 10時〜18時 金曜日・土曜日は20時まで
※入場は閉館30分前まで
場 所 国立新美術館 企画展示会1E+野外展示場
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 http://www.nact.jp
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