東京上野のにある「国立西洋美術館本館」が世界文化遺産に登録されそうです。国際記念物遺跡会議が、ユネスコの世界遺産委員会に「国立西洋美術館本館」を含むル・コルビュジエの建築作品17件は世界遺産登録が適当とする勧告をした模様。国内唯一のル・コルビジェ作品として、建物好きからは既にかなり有名な施設ですが、これで一気にに知名度と人気が上昇しそうです。
目次
「国立西洋美術館」が世界遺産登録予定
まだ、正式決定した訳ではありませんが、「登録が適当」とする勧告が発表された場合はほぼ認められるようです。ちなみに、勧告は「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4種。「登録」以外の勧告でも最終的に「登録」されることがありますが、「不登録」になると、各国がユネスコ世界遺産センターに提出する暫定リストにも掲載できなくなります。残念ながら、以前落選した鎌倉は「不登録」でしたね。
(参考)諮問機関による評価結果の4つの区分
(1) 記載(Inscription):世界遺産一覧表に記載する。
(2) 情報照会(Referral):追加情報の提出を求めた上で次回以降の審議に回す。3年以内に追加情報の提出を行った後、現地調査手続きを除くイコモスの審査を受ける。
(3) 記載延期(Deferral):より綿密な調査や推薦書の本質的な改定が必要。推薦書を再提出した後、新規案件と同様の手続きを受ける。
(4) 不記載(Not to inscribe):記載にふさわしくないもの、例外的な場合を除き再推薦は不可。
過去2回は落選。その理由は?
「国立西洋美術館本館」は2009年と2011年にも登録申請をしていましたが2009年は情報照会、2011年は記載延期となり、登録に至りませんでした。2011年の記載延期から登録に至ったということは大逆転! 何が理由で過去2回は登録に至らなかったのでしょう? 調べてみました。
計7か国17件の共同推薦
ここで注意すべきは、この推薦は西洋美術館単独ではなく、フランス、スイス、ベルギー、ドイツ、アルゼンチン、インド、日本による、計7か国17件の共同推薦だということです。これは過去に例のない方法であり、苦労した大きな要因だったようです。前回は「推薦施設中、一部施設はOKだけど他はダメ」なんて判断もされてます。
2009年の落選理由
2009年の世界遺産委員会では、ル・コルビュジエの建築と都市計画の「顕著な普遍的価値」の証明をさらに充実させることや、関係国の共同管理体制を拡充させることが望ましいと指摘され、「情報照会」と決議されました。
2009年の「情報照会」決議をふまえた対応はこちらに詳しく記載されています。
参考:「情報照会」決議への対応
https://www.city.taito.lg.jp/other/sekaiisan/seibi_3taiou.html
2011年の落選理由
2011年は「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」として提出されました。2009年よりも「近代建築運動への貢献」を強調した内容で推薦書を提出しましたが、国際記念物遺跡会議では「不登録」、その後の世界遺産委員会の審議ではどうにか「継続審議」となり「不登録」となることは避けることができましたが、残念ながら登録には至りませんでした。理由としては、「近代建築運動」はル・コルビュジエだけが貢献したものではないとされ、「顕著な普遍的価値」を持つとは認められなかったようです。難しいものですね。
「国立西洋美術館本館」に対する指摘
国立西洋美術館は、価値を証明する他の美術館との比較が不足しており、その価値の証明が不十分であると指摘されていました。今回どのように証明したのかは知る由もありませんが、チャンディーガルやアーメダバード美術館(いずれもインド)との比較を要求されたようです。
東京都内の世界文化遺産は初
国立西洋美術館本館が正式に世界遺産に登録された場合、東京都内初の世界文化遺産となります。東京には国宝はあれど、世界遺産は無かったのね、と思ってしまいますが、東京にはもう一つ世界遺産がありますよ!
それは世界自然遺産に登録されている小笠原諸島。あまりアクセスが良いとは言えない場所だけに忘れがちですが、東京の世界遺産は二つ目という事になりますね。
正式決定はいつ?
正式決定は今年の7月10日からトルコで開催される世界遺産委員会で最終審査されます。よっぽどの事がない限り、「登録」勧告が覆る事はなさそうですよ。ただ、世界遺産の登録と聞くと、近年登録時に諸外国からいろんな注文があったことを思い出します。今回は何事もないと良いですね。
「国立西洋美術館」の入場料は?
世界遺産登録濃厚と聞くと、早速見に行きたくなるもの。情報をまとめておきます。そもそも「国立西洋美術館」はその名の通り「美術館」ですので、目的とする展示内容によって料金が異なります。常設展示の入場料(観覧料)は一般430円、大学生130円、18歳未満もしくは65歳以上は入場無料となります。これは必要以上に混雑しそうな予感。
企画展示の方は企画次第で料金が異なります。ちなみに、現在開催中のカラヴァッジョ展は一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円です。
常設展観覧料
個人 | 団体(20名以上) | |
一般 | 430円 | 220円 |
大学生 | 130円 | 70円 |
※高校生以下及び18歳未満、65歳以上、心身に障害のある方及び付添者1名は無料(要証明書)
国立西洋美術館内は撮影できるの?
世界遺産!と聞くとどうしても写真を撮りたく方も多いのでは?実は国立西洋美術館は建物に限らず、常設展に関しても基本的には撮影可(フラッシュ、三脚の使用は不可)となっています。今後の混雑次第で対応が変わる可能性もありますが、日本の美術館が撮影可となっているなんて珍しいですよね。
国立西洋美術館のアクセス
最寄り駅はJR上野駅です。銀座線、日比谷線、京成線も利用可能ですね。車で訪問する場合、美術館自体に駐車場はありませんので周辺の有料駐車場を利用する必要がありますが、上野公園周辺はいつも大混雑、公共の交通機関を利用した方が無難です。
まとめ
3度目の正直でようやく悲願達成となりそうな国立西洋美術館の世界文化遺産登録。
国立西洋美術館は、その建物はもちろん、常設展示も見応えある作品が揃っていますので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。最後に、上野公園周辺に関してはいくつか記事を書いていますのでぜひそちらもご覧下さい!
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